2024/05/28

YouTubeで流れてきた関東の超満員電車の動画をつい開いてしまい眺めていた。通勤通学客が駅ホームの係員にぎゅうぎゅう押し込まれているのを見ていてふと、「車両全部2階建てにしちゃえばみんな収容できるんじゃね?」という安易な思いつきに至った。

調べてみると、確かに2階建てにすれば定員は増えるし、実際JRは1992年、通勤用に全車両2階建ての電車(215系)を作ったらしいが、構造上ドアが1両に片側2つしかないがゆえに乗降に時間がかかるのが難点で、あまり普及しなかったとか。

trafficnews.jp

toyokeizai.net

うーん、確かに俺が知ってる中で2階建車両が走ってる路線というと湘南新宿ラインと京阪くらいだけど、どっちも2階建ての車両はドア2つしかないな…。何か技術的な問題があるんだろうか。

でも2階建てはうまくいけば収容力を革新的に向上させられるだろうから、やっぱり簡単に諦めるべきじゃない気がする。じゃあホームも2階建てにしてドアを2階と1階で別にするというのはどうだろうか?そうすればドアの数が2倍になって乗降スピードも2倍になる!

…という思いつきが頭をよぎったが、落ち着いて考えれば流石にホーム改修のコストとかが大きすぎて現実味が薄そうに思える。が、調べてみると実際に過去同じようなことを言った有識者がいるようだ。以前小池百合子都知事選に出た際、満員電車解消のために2階建て車両を導入することを唱えたらしいのだが、そのアイデアの裏にいたのは、元JR東日本で交通コンサルタントの阿部等氏という人だったとのこと。この人が俺と似たようなことを言っている。阿部氏のアイデアは以下の通り。

merkmal-biz.jp

 阿部氏は「満員電車ゼロ」を実現するために、さまざまな方策を提示している。そのひとつが2階建て車両導入の構想だった。まず弁護すると、阿部氏は、2階建て車両導入が

「即ゼロ」

となるような、ずさんな計画を提示しているわけではない。この時期、積極的にメディアで発言していた阿部氏は、混雑解消のためにさまざまな方法を提案している。

 例えば「全路線・全列車・全区間の混雑率」を毎日公表するというのも、そのひとつだ。満員電車の現実の「見える化」を実施し、蓄積されたデータを活用することで

「朝ラッシュ時の上り以外」

の満員電車ゼロを早期に実現できるというものだ。これ自体は実現できる提案だが、それに続いて、あたかも本命のように2階建て車両導入が語られているため、その構想に少々疑問符がついたのは否めない。

 事実、構想はあまりに壮大で非現実的なものだった。2階建て車両の導入といっても、東海道線グリーン車のようなものを走らせるわけではない。また、東海道本線湘南ライナーなどで運用されていた「215系」のような車両を使うのでもない(1992年に導入された10両編成・オール2階建ての電車。編成の短さとドアの少なさから支持を得られず2004年で東海道本線から撤退)。2階建て車両を導入するとともに、

「ホームも二層化して上下で乗降できるようにする」

というのが、構想の主軸だったのだ。これはかなり奇矯なアイデアである。また、線路の脇から集電する第三軌条方式を使えば、架線やパンダグラフがなくなるため、交差する道路などの改築が不要かつ、複々線化や新線建設よりも安いと主張している。そのための財源は、首都圏の鉄道利用者の客単価を40円あげれば、鉄道会社は年6000億円ほどの増収になるので、それを充当するとしていた。

ホームも二層化して上下で乗降。やっぱアリですよねこのアイデア?…と言いたいところだが、結局この記事だと、費用や工事期間、構内設備などの問題を考えるとやっぱりこれは非現実的で、2階建て車両案は小池都知事の「黒歴史」、という評価のようだ。そりゃそうだ。あまりに普及した既存の設備やインフラを総とっかえするというのは鉄道に限らずどんな産業でも実現は困難だろう。革命的・革新的と形容されるような大転換が必要になる。

じゃあどうすれば満員電車は解決するのか。個人的には早くどこでもドアを開発してほしいところだが、さしあたりはリモートワークをもっと推進するくらいしか現実的な対症療法はなさそうな気がする。